connect4『唱歌の社会史──なつかしさとあやうさと』

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永澄憲史 中西光雄 河津聖恵 山室信一 伊藤公雄 野田淳子 中西圭三 佐久間順平 メディアイランド出版刊

装丁:上野かおる × 版元+組版:メディアイランド 千葉潮

お仕事の概要『唱歌の社会史──なつかしさとあやうさと』

──はじまりは、コンサートのポスター、チラシの依頼

 2015年の話なので、随分さかのぼりますが、思い出深い1冊の話をします。
ある日、突然、新聞記者のNさんから電話がかかってきました。「コンサートを企画しているから、ポスターとチラシのデザインを頼みたい。」
 Nさんはお酒が大好き。Nさん主催の「紫野の会」という勉強会(飲み会?)のメンバーだったので、誘われるままに、木屋町の赤ひげに行きました。打ち合わせはここが多くディープな居酒屋です。
 2階に上がると、「紫野の会」で顔なじみの大学の先生や編集者が集まっておられました。そこで始めて中西光雄さんにお会いしました。

──京都新聞朝刊の連載がきっかけで、コンサートと討論会を催すことに

 中西さんの連載「唱歌の社会史」は12回続き「蛍の光」をはじめ、「故郷」「春の小川」などを取り上げ、四季を詠い込んだ懐かしさの背景にあるものに迫り、日常生活や個々人の内面に与えた影響などを寄稿されていました。連載終了後、問題意識をより深めたいというお二人の思いから、コンサートを兼ねた討論会をしたいという話でした。
 ブックデザインが主な私ですが、コンサートと聞きワクワクして、すぐにスタッフに加えていただきました。コンサートの日時や会場、討論会を誰に頼むのか、集客はどうするのかなど、お酒を飲みつつ、次第にテンションもあがり、次々と決めていきました。

──11月9日、「唱歌の社会史──なつかしさとあやうさと」開催

 前半は中西圭三さん、野田淳子さんのコンサート。素敵な歌声にうっとりしながら唱歌を聞きました。後半は、中西さんと詩人の河津聖恵さん、山室信一さん(法政思想連鎖史)にパネリストになってもらい、お話を聞きました。
 集客のため、たくさんの人にチラシを配りました。会場は、ほぼいっぱいになりました。お誘いした千葉潮さんも来てくださいました。そして、思いもかけないお言葉が。「本を作りませんか」。

──「唱歌の社会史──なつかしさとあやうさと」を出版することに

 千葉さんから出版の話しがあり、メディアイランドから出版することが決まりました。
 語りきれきれなかったことなど、パネリストの3人とコーディネーターを勤めてくださった伊藤公雄さん(社会学)の書き下ろしも含め2018年6月に出版しました。
 歌詞が文語から口語に変わっていく以外な経緯、唱歌と童謡の関係、旧満州や植民地時代の朝鮮半島、台湾での唱歌的な存在の受容のされ方など、興味深い論考となっています。
 じっくりと本は読者の手にとどいていき、なんと5刷りになりました。

──デザインについて

 チラシを先に作ったのですが、出口敦史さんにイラストを依頼しました。装幀も同じ絵を使いました。見返しをベリーレッド色にし、扉にもイラストを配置して、温かみのある造本になり、とても思い出のある大事な1冊が出来上がりました。


メディアイランド出版刊 唱歌の社会史 なつかしさとあやうさと

千葉さん

 千葉さんとは、大変古いお付き合いです。経理のことで悩んでいた時に、千葉さんから、ネッツで確定申告のセミナーがあることを教えていただき、そこに参加したことが入会のきっかけになりました。千葉さは、とても優しい温もりのある声でお話されるので、いつも聞き入ってしまいます。
 歌も大変お上手。現在は、安来市加納美術館館長です。またいつか、本造りをご一緒したいです。

次回

次回は、千葉潮さんにバトンをお渡しいたします。みなさま、お楽しみに!

お仕事のご相談など

上野かおる装幀室
〒569 − 0081 高槻市宮野町18-11 tel 080-3130-9993 fax 072-675-5344 
e-mail ueno@k-soutei.com

メディアイランド 千葉潮 
chiba@mediaisland.co.jp

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